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2026/08/12

作って学ぶお盆文化 精霊馬づくりで育む想像力と死生観

夏になると、お墓参りや迎え火・送り火など、お盆に纏わる行事を目にする機会が増えます。近年は生活様式の変化により、お盆の行事に触れる機会が減った家庭も少なくありません。

そんな中、親子で気軽に取り組めるお盆文化のひとつが「精霊馬(しょうりょううま)」づくりです。胡瓜や茄子に割り箸や爪楊枝を刺して馬や牛に見立てる伝統的な工作ですが、実はこの体験には、子どもの想像力や死生観の発達につながる要素が含まれています。

今回は、精霊馬づくりを通して子どもが学べることや、育脳との関係について考えてみましょう。

精霊馬とは?

精霊馬とは、お盆に帰ってくるご先祖さまの魂が乗る乗り物として作られる飾りです。

一般的には、胡瓜を馬に見立てて「早く家へ帰ってきてもらう」、茄子を牛に見立てて「ゆっくりあの世へ戻ってもらう」という願いが込められています。地域によって由来や意味合いは異なりますが、日本各地で長く受け継がれてきたお盆文化の一つです。

大人にとっては当たり前に見える風習でも、子どもにとっては不思議がいっぱいです。

「どうして野菜が馬や牛になるの?」
「ご先祖さまは本当に乗るの?」
「亡くなった人はどこにいるの?」

こうした疑問は、子どもの知的好奇心や想像力を刺激する切っ掛けになります。

精霊馬づくりは“見立て遊び”

幼児期の発達において重要とされる活動の一つが「見立て遊び」です。

積み木を車に見立てたり、段ボールをお店に見立てたりする遊びは、実際には存在しないものを頭の中で想像しながら表現する力を育てます。

精霊馬づくりも同じです。

ただの胡瓜を「馬」として捉え、そこにご先祖さまが乗る様子を思い描くことは、目に見えないものを想像する高度な認知活動といえます。こうした経験は、創造性や柔軟な思考力の土台づくりにつながります。また、「もっと速そうな馬にしたい」「牛の顔を作ってみたい」など、自分なりの工夫を加えることで、表現力や主体性も育まれていくでしょう。

お墓参りは死生観を育てる機会

「死」という題材は、大人でも扱いが難しいものです。併し、子どもは成長する中で少しずつ死について理解していきます。お墓参りやお盆行事は、「亡くなった人を思い出す」「命の繋がりを考える」機会になります。

幼い子どもは、死を一時的なものや眠りの延長のように捉えることがあります。併し成長と共に「死は誰にでも訪れること」「亡くなった人は元に戻らないこと」などを理解していきます。

お盆の行事を通して、

「ひいおじいちゃんはどんな人だったの?」
「お母さんが小さい頃は何をしていたの?」

といった会話が生まれることもあるでしょう。こうした家族の物語に触れる経験は、自分が多くの人との繋がりの中で生きていることを知る切っ掛けになります。

家族の歴史を知ることは自己肯定感にもつながる

子どもの健全な発達には、「自分はどこから来たのか」「誰と繋がっているのか」という感覚が大切だと考えられています。お盆の時期は、普段会えない親族と交流したり、家族の思い出話を聞いたりする機会でもあります。

精霊馬づくりやお墓参りを通して、

「この家族の一員なんだ」
「沢山の人に支えられているんだ」

という感覚を得ることは、安心感や自己肯定感の形成にもつながります。子どもにとって大切なのは、死を怖いものとして教えることではなく、命の繋がりや家族の歴史を感じられる機会を持つことなのです。

家庭でできる精霊馬づくり

精霊馬づくりは特別な道具がなくても楽しめます。

【用意するもの】
・胡瓜
・茄子
・爪楊枝または割り箸
・飾り付け用の画用紙やシール(任意)

【楽しみ方】
・どんな馬や牛にしたいか親子で話し合う
・顔や飾りを付けて独自の精霊馬を作る
・ご先祖さまや家族の思い出話をする
・お墓参りやお盆行事と併せて体験する

完成度よりも、「なぜ作るのか」「どんな思いが込められているのか」を親子で話しながら進めることが大切です。

まとめ

精霊馬づくりは、単なる季節の工作ではありません。野菜を馬や牛に見立てることで想像力を育み、お墓参りや家族との会話を通して命の繋がりや死生観に触れる機会になります。

お盆文化に込められた意味を親子で共有することは、子どもの心の成長を支える貴重な経験になるでしょう。

今年のお盆は、ぜひ精霊馬づくりを通して、家族で命やつながりについて話す時間をつくってみてはいかがでしょうか。

参考文献・参考資料

・Menendez, D. (2020). Children’s Emerging Understanding of Death. Child Development Perspectives, 14(1), 55-60. 子どもは家族との会話や文化的儀礼への参加を通して死の概念を形成していくことが示されている。

・Speece, M. W., & Brent, S. B. (1984). Children’s Understanding of Death: A Review of Three Components of a Death Concept. Child Development, 55(5), 1671-1686. 子どもの死の理解は「不可逆性」「非機能性」「普遍性」の理解によって発達すると報告されている。

・中村照子(1994)『子どもの死の概念』発達心理学研究。幼児期から児童期にかけて死の概念理解が発達し、学齢期にはより成熟した死生観が形成されることを示している。

・Lazar, A., et al. (1991). The Development of the Subconcepts of Death in Young Children. Child Development, 62(6), 1321-1333. 死の概念は複数の要素が段階的に発達することを報告。

・Panagiotaki, G., et al. (2018). Children’s and Adults’ Understanding of Death: Cognitive, Parental, and Experiential Influences. Journal of Experimental Child Psychology, 166, 96-115. 家庭環境や保護者との対話が死の理解に影響することを示している。