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2026/08/04

「泳げる」よりも「生きのびる」力を。未就学児にこそ必要な水の安全教育

はじめに:水は楽しい、でも“聞き耳”が必要

プール、海、川。水あそびは子どもにとって特別な楽しさがあります。けれど、楽しい時間ほど、ほんの少しの油断が大きな危険につながります。だからこそ、未就学児に必要なのは「上手に泳ぐこと」だけではありません。水のそばで何が危ないのかに気づき、助けを求め、落ち着いて待つ力です。オーストラリアのRoyal Life Savingは、個人・組織・地域に向けて実践的な水安全教育を行い、未就学児向けの教育も含めて年齢に応じた学びを用意しています。

この考え方は、「水の楽しさ」を奪うものではありません。むしろ、楽しさを続けるために、先に危険を知っておくという発想です。参考資料でも、水難の現状を踏まえながら、学校や家庭での水泳教育を「泳力」だけでなく、水辺で自分の命を守るための教育へ広げる必要性が示されています。

 

しらべる:水のまわりの“しんごう”を見つけよう

未就学児向けの水安全教育では、まず「どこが危ないのか」を親子で一緒に探すことが大切です。深い場所、すべりやすい場所、流れのある場所、寒い水、混んでいる場所、そして大人の目が届きにくい場所。こうした“しんごう”を見つけることが、最初の学びになります。Royal Life Saving の教育ページでは、Pre School Education、Primary School Education、High School Education といった年齢別の教育が並び、子どもの発達段階に合わせた内容を届ける仕組みが示されています。

さらに同ページには、学校教育の訪問プログラムについて、Australian Curriculum、NSW Syllabus、Early Years Learning Framework に対応した年齢別の内容を提供するとあります。つまり、水辺の安全は「特別な場でだけ学ぶもの」ではなく、子どもの成長に合わせて繰り返し確認するものだと分かります。オーストラリアでは水辺の危険を予測し、対処法を学ぶことが重視され、実際の水の特性を理解する中で学びを深める姿勢が示されています。

 

やってみる:3つの“生きのびる動き”

未就学児にとって、難しい説明よりも、体で覚えられる動きのほうが残ります。水のなかで大切なのは、「叫ぶ」「浮かぶ」「つかまる」の3つです。自分で戻れないときは、すぐに声を出す。泳ぐよりも先に、浮いて落ち着く。近くにあるものにつかまって、助けを待つ。この順番を、親子で短い遊びにして繰り返すと、いざという場面で思い出しやすくなります。

オーストラリアの水安全教育は、知識だけでなく実践を伴うこと、そして水の中で自分の命を守る感覚に結びつけている点が重要で、例えば、ライフジャケットを着けた体験、浮く動き、救助を呼ぶ行動、さらに安全な救助方法を学ぶことなどです。

実際Royal Life Saving でも、Community Water Safety Programs や Water Safety Talks and Presentations、CPR and First Aid Awareness など、知識と行動をつなぐ教育が用意されています。水を「見て終わり」にせず、実際に体を動かして覚える設計だからこそ、未就学児にも届きやすいのです。

 

親子で考える:いつ・どこで・だれが見る?

子どもの水難を減らすうえで、保護者の役割はとても大きいです。泳ぐ力を伸ばすこと以上に、「誰が見守るのか」「どこで遊ぶのか」「どの道具を使うのか」を先に決めることが必要です。監視役をはっきり分ける、深さが安定した場所を選ぶ、ライフジャケットを使う、入水前に約束を確認する。こうした準備が、水あそびの安全を支えます。Royal Life Saving の教育ページには、個人・組織・地域に向けた実践的な教育に加え、家庭やコミュニティに合わせたプログラムが示されており、水安全が家族ぐるみの課題であることがうかがえます。

加えて、オーストラリアでは学校だけでなく、各州の関係組織が連携しながら水難予防を進めていること。また水泳授業も「泳ぎの巧拙」ではなく、危険回避や安全確保に結びつく学びへ広げるべきだとされています。水辺の事故は、子どもだけの問題ではありません。見守る大人の意識と行動が、事故の起こりやすさを大きく左右します。

 

おわりに:水あそびの前の合言葉

未就学児の水安全教育は、怖さを教え込むことではありません。水を楽しむ気持ちを残したまま、「見て、止まって、呼んで、待つ」という合言葉を、親子で何度も確認していくことです。水のそばで立ち止まる。危ないと思ったら入らない。困ったらすぐ声を出す。助けが来るまで落ち着いて待つ。こうした行動が、子どもの命を守ります。

オーストラリアの実践が示しているのは、「泳げる子」を育てるだけでは不十分だということです。大切なのは、泳ぐ前に危険を知り、もしものときに自分を守る力を身につけることです。未就学児にこそ必要なのは、速さではなく、生きのびる力です。水あそびをもっと安心して楽しむために、今日から親子で、小さな合言葉を持っておきたいものです。

 

参考文献・出典

・Royal Life Saving Society of Australia, WATER SAFETY EDUCATION(https://www.drowningprevention.org.au/education)

・オーストラリアに学ぶウォーターセーフティの現状と日本の可能性(https://shinnosuke0907.net/wp-content/uploads/2021/pdf/matsumoto.pdf)